私は「フェルミ推定」という理論を使って常にビジネスの方向性を模索しています。えっ、それって何?ってなりますよね。皆さん、こんな話、どこかで聞いたことありませんか。シカゴにいるピアノ調律師の人数は?日本国内に電柱は何本あるか?コンビニはいくつある?缶コーヒーの年間売上は?いずれも現在自分が知っている範囲の知識を総動員して最も確からしい近似値を推定せよ、なる話を。
まず、この理論を提唱したフェルミについてざっと説明しましょう。エンリコ・フェルミは1901年9月29日イタリア/ローマで生まれました。彼は若い頃から数学と物理学に大変な興味を持ち、その才能を発揮してきました。その後ピサ大学で物理学を学び、早くから優れた研究者としての評価を確立しました。フェルミのキャリアの中で最も注目すべき業績は、核物理学と量子力学における彼の貢献です。彼は「フェルミ統計」や「フェルミ液体理論」といった重要な理論を発展させ、原子核の構造についての理解を深めました。また、彼はニュートリノの存在を予言し、この素粒子の性質を研究する先駆的な仕事を行いました。更に、臨界質量の推定にフェルミ推定を使用しました。物理学や工学において問題を素早く評価し、合理的な近似値を見つけるための手法です。
フェルミ推定は、物事を簡単に計算し、大まかな答えを見つけるための有用なツールとして、科学者やエンジニアの分野だけでなく、大手コンサル会社や金融機関など経済界でも広く受け入れられ、市場調査や需要予測などに使われています。何と言っても、現場まで見に行ったり、いくつもの正しい数字を調べなくても机上で電卓1つで計算できる手軽さと圧倒的低コストが売りです。上手く使いこなせればまさに、魔法の杖です。これを使わない手はありません。論理的思考を養い分析能力を向上させるのに持ってこいの教材です。例えば私は「千葉県内の養豚は何匹?」、「千葉県内の高校生の数は?」、「千葉県内の自動車免許保有者数」など日本全国で見るとかなりブレイクダウンした推定ですが、こんな数字を使ってお客様にアドバイスしています。このおおまかなある意味あてずっぽう(前提を間違えると実際と1桁2桁違ってしまう)の数字ですが、これを現実に限りなく近づけていくのが、コンサルタントの腕の見せところなのです。
私もお客様からの信頼を損なわないよう日夜研鑽を積んでいます。が、しかし、上記に書いた通り周辺基礎知識(千葉県の面積や人口、市町村数や事業者数など)を確り理解していないと全く違う数字になってしまうので、事実の暗記と論理的思考力の両方を常に鍛え続けなければなりません。正直、結構しんどい。特にそれでなくてもぼーっとしている頭を奮い立たせても漸く人並以下の頭脳でお客様から飽きられないようにするには相当な努力が必要、なはずです。まあ、そんな私でもなんとかやっていられるのは我慢強いお客様やこのコラムの読者様の寛大さ故でしょうね。ありがとうございます。
2023年9月13日
フェルミ推定を使って月にいるウサギを数えている
本郷 茂