ところで皆さん、「ねんきん定期便」はご存じでしょうか。このコラムを読んでくださる賢明で有難い読者様(ほとんどいないかも知れませんが)は恐らく私と親子ほど歳が離れている方は少なく、それなりの経験値を持った方々が多そうなので(多分)、もしかしたらこれまでにご自宅に届いていることがあるかも知れません。国民年金保険、厚生年金保険に加入している人には毎年誕生月(1日生まれの方は誕生日の前月)に日本年金機構から届きます。これまでの加入実績に応じた年金額(目安)や50歳以上の方にはいつから(年齢)いくらくらい(見込額)どのような年金(種類)が受けられるかが記載されている「幸福のお手紙」とも言えなくない大事なお知らせです。ところが、これだけ熱心にお知らせしてくれるのですが、いざもらうときは「請求」しないともらえない(申請主義)などちょっとツンデレのような感じもしますね。でも大丈夫、年金の受給権が発生する方には、支給開始年齢に達する3ヵ月前に年金請求書(事前送付用)が日本年金機構から間違いなく送られて来ますから。
自動的に支給開始しないのにはちゃんとした理由があるのです。年金は繰り上げたり繰り下げたりが選択できたり、障害年金、遺族年金該当など本人や遺族からの意思表示(通知)がないとわからない要素もいっぱいあるからです。だって、自動的に支給開始したら後で「わたしは実は繰り下げたかったのに」といわれたら、お互い手続きが大変ですよね。ですから、年金請求書が届いたらしっかり手続きしてください。繰り下げ含めどのように手続きしたらよいか、ご不明の場合は私まで遠慮なくお問合せください、懇切丁寧にお教えします。
ただし、最近話題になっている繰り上げ受給は要注意です。というのも、何たって減額率が半端なく高い(私個人の肌感覚)からです。65歳を基準にして毎月0.4%づつ減額を上乗せ、従って5年60月繰り上げて60歳受給開始にすると24%減額(76%受給)、更に老齢基礎年金、老齢厚生年金ダブルでの繰り上げがマスト(どちらか一方はだめ)なので年金額全額が目減りしてしまいます。更に、その間に障害年金受給要件に該当しても受給権がなくなってしまいます。「いつ繰り上げたり繰り下げたりするのが最もお得ですか?」この手の相談が一番多いのですが、ここでの私の個人的見解は、下手な小細工は一切せず「65歳で受給権が発生したらもらいなさい」となります。確かに60歳24%減額支給でも、単純計算では80歳まで65歳100%支給に総額ベースで抜かれないので考え方次第ではそれもありだと思います。しかしそうすると、何となく「いつ亡くなるかわからないから早めにもらうんだ」という概念が無意識の中で言霊となって成就しかねない、とも考えられます。最終的に決めるのは「あなた」です。
私はどちらかと言うと年金は得意な社労士を自認していますが、それでもやはり年金は難解で複雑なパッチワークに感じます。というのも、あまりにも度重なる法・制度改正とそのパーツを切っては貼って貼っては切ってを繰り返しているうちに巨大な張りぼてになってしまったからです。更に「国民年金保険」も「厚生年金保険」も「保険」なんですね、セーフティネットが張り巡らされている分、これが更に輪をかけてわかりにくくしている。長くなったので、これについては別の機会で触れてみることとして今日は筆を置かさせてください。
2023年9月7日
60歳過ぎても年金保険料をしっかり納付している
本郷 茂